迷い猫

適当に目についた本を読んで難しい顔してます。読んだ本を重ねて、そこから見える世界を楽しみたい

分岐点『住野よる/また、同じ夢を見ていた』

家に置いてあったので読みました。『君の膵臓をたべたい』の作者さんですね。

感想を書くにあたって話の落ちを書いてしまうので知りたくない方は読まないでください。

また、同じ夢を見ていた

また、同じ夢を見ていた

 

 あらすじ

小学生の主人公、小柳奈ノ花が人と接しながら成長する話。高校生の南さん、大人のアバズレさん、木の家に住むおばあちゃんと話をしながら、「幸せ」についての考えを掘り下げる話。

 

ライトノベルのような

 語りの視点が小学生である奈ノ花だったから、なんとなく読みづらい印象をうけました。口語的な文体で音で聞く分にはいいのですが、活字を追うとなると難しい。調べてみたらもともとライトノベル用に書いたということだったのでそれで文体が口語のような印象を受けたのかと。

 

分岐点

 話のつくりは面白かったです。多少謎や疑問が残ることもありますが良いと思います。

 南さんもアバズレさんも奈ノ花が成長した姿であり、ある人生の分岐点で間違ったほうを選んだ場合の将来の自分の姿です(たぶん)。そのことを踏まえるとおばあちゃんの言葉は意味深い

 

大切な人を失った南さん、自分を壊してしまったあばずれさんのことを、もしかしたら自分もそうなっていたかもしれないという話をするとき

「でも、わたしはそうしなかった。幸せだと思える人生をあるいてこられた。そりゃあ、嫌なことなんて数えたらきりがないんだけど、でも、それよりもっと多く、数えきれない楽しいことやうれしいことがある人生を歩いた」

 

タイムスリップではないですが、あの時違ったことをしていたら、違った未来がある。おそらくおばあちゃんもまた、どこかの時点で奈ノ花との分岐でしょう。ただどこの分岐かわかりませんが。

そんなもしもの話。最終的に相手の言葉が心に残るのは『コーヒーが冷めないうちに』と似ている気がします。

 

結び

 将来の自分と会うことで、自分に変化がある小説はありますが、将来の自分と知らず接して、自分が良いほうに変わっていくというのがおもしろいと思います。おばあちゃんと一緒に猫も消えてしまいましたが、あれは人間に生まれなかった場合なのかということと、それぞれが会う場所はなにか意味があったのかと考えています。