日本が目指すべき雇用契約
どんな労働形態が幸せなのか考えるため、読みました。
若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす (中公新書ラクレ)
- 作者: 濱口桂一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/11/14
- メディア: Kindle版
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本文要約
話の大筋だけまとめます。
日本はメンバーシップ型、欧米はジョブ型
日本はメンバーシップ型社会、欧米はジョブ型社会と表現される。
ジョブ型は仕事の内容が明確に定められており、働く時間や空間が区別されている。報酬の基準も明確である。メンバーシップ型は仕事内容が曖昧であり、働く時間や空間に制限が少なく、給与が年功序列であり、なかなか解雇されない。
日本の雇用の種類
では、日本で雇われている人は全員メンバーシップ型か。そうではない。非正規職員という雇用形態がある。給与は家計を補助する程度であり、契約期間が存在するため、雇いやめになる可能性がある。その分、正規職員にあるような転居を伴う異動があまりない。
今までは非正規労働者は、既婚女性や大学生が主流だった。その分、成人男性の雇用は守られていた。
しかし、全員が願えば正規労働者になれた時代が終わり、非正規労働者の割合は増えている。
目指すべき労働者像
どのような雇用契約が望ましいのか。 正規労働者と非正規労働者の間に「ジョブ型正社員」と提案する。正規労働者や非正規労働者は、希望をすれば、このジョブ型正社員に移行ができる。
ジョブ型正社員の特性は、正規労働者より雇用保障を縮小し、その分だけ、働く空間や時間をより有限にする。また、非正規労働者より仕事がある限り解雇はされない。
読んだ感想
「メンバーシップ型をとりもどせ。かつての日本をとりもどせ」という論調でなく、しっかりとした内容でした。
私は、本を読む前は「全員ジョブ型」の社会が望ましいと考えていたのですが、本書を読むと、歴史の中でジョブ型への舵を切ったところは多くあったのがわかりました。ただ、多くは失敗に終わったようです。
日本の今の流れでは、残業時間の縮小が求めらています。とても良いことだと思います。もちろん、その分、正規労働者のメリットを減らせばよいと思います。
本書でも述べていますが、給与と職務の明確な関係性か低い日本では筆者が提案するバランスのよい労働環境が必要なのかと思います。
日本でテロが起きる可能性について『青山繁晴 壊れた地球儀の直し方』
アメリカの大統領がトランプになって、日米関係や世界のバランスがどのようになっていくのか疑問を持つ日々です。政治や国際関係に疎いためか、輪郭のない不安があります。
そんな時に読んだからか、記憶に残った『壊れた地球儀の直し方』。新書なのにぶ厚い。政治的に議論がある自衛隊や憲法について触れおり、この本を出版するのは勇気がいるのではないかと思います。
要約
今までアメリカに防衛を任せてしまったことで、自国について考えてこなかった日本にテロの危機に警鐘をならす。アメリカが崩れてきた今、日本が自立した国として生きていくことを説得していく。
わたしたち国民の代わりに安全保障を担ってくれるお上もそのお上の代わりに日本を守ってくれるアメリカも、もはやあやふやな存在に過ぎない。長い歴史のなかであやふやで来た私たち国民が明瞭な存在変わるときが到来した。
それが、超国民である。
テロの可能性について考えさせられる
なにかの受け売りですが、たいていの本(小説を含む)は読者に何かを説得するために書かれているのかと思います。ただ、簡単に一言で説得するのは難しいから「本」という文章の集合体を使うのかと思います。
私が生きている間は、テロは日本で起きないのではないかと思っていますが、この一冊で変わりました。今はテロが必ず起こるとまでには至っていませんが、起こる可能性は大いにある考えてしまいます。つまり、
著者である青山さんの話が勝手な推測とかでなく、多くの関係者から話を聞き、それが本著になっているからでしょうか。説得力があります。
本著で扱っているテロについて補足をすると、今日いわれているISのテロではなく、北朝鮮のテロについて可能性を語っています。
自分の頭で考える
2020年にはオリンピックが開催されます。このことはテロの可能性が高まる大きな要因となるのではないでしょうか。
そのなかで自分たちで、日本を守るようにしていけばよいか考えなければならないのかと思わされます。
では、実際どのようにすればよいのか。
そのことについて本書では特に言及がありません。よくある「選挙にいこう」といった話はありません。
ここから自分で考えることの始まりです。
自分の仕事のやり方に疑問を持った時に読む本『山梨広一/いい努力』
今月は仕事の山場が多く、助けとなった本の紹介です。
『最強の働き方』が立ち読みして肌に合わなかったのでこちらを読みました。
マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をしてわかった いい努力
- 作者: 山梨広一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/07/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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要約
世の中には「いい努力」と「わるい努力」がある。マッキンゼーで25年働いてわかったいい努力とわるい努力を75選紹介。下記は著者が考える「いい努力」の7つの定義である。これだけでも意識したら仕事の仕方が変わるかもしれない。
①「成果」につながる
②目的が明確なもの
③「時間軸」を的確に意識しているもの
④「生産性」が高いもの
⑤「充実感」を伴うもの
⑥「成功パターン」が得られるもの
⑦「成長」を伴うもの
チームで働くことの難しさ
今年からチームのリーダーとなる機会が多くなり、そのことで戸惑うことが多くなりました。まとめ役として舵を切っていくために参考にしたところを紹介します。
チームの基本
「全員が向かう先」を明確に共有する(悪い努力:自分のパートにだけ注力する)
という箇所からリーダーについて書かれた一言です。
設計図をつくり、説明し、共有するのがリーダーの役割
仕事の全体の設計図を作ることもままならなく、ちゃんとした設計図も書かずに作業にとりかかった自分が恥ずかしいですね。目的をしっかりと決めないと、議論の進みも悪くなることを体験しました。一方で、全体の工程を決めて、各会議で「ここまで決める」と明確に説明をして、議論を重ねるのがやったかいのある会議だと思います。
また、議論についても参考になる一文があります。
議論と会議
議論は「紛糾」しなければならない(悪い努力:すんなり提案を通すことに尽力する)
会議が紛糾するのは提案に付加価値がつくことだ。
会議に参加する人も提案する人も必要な心構えです。確かにすんなり通るなら、連絡だけでよいと思います。勤めてから紛糾するような会議は一度や二度くらいしかないですが、その時の会議内容は今なお解決しておらず、重要な議題だったと思います。
今後も開くことが多くなりそうな一冊でした。
分岐点『住野よる/また、同じ夢を見ていた』
家に置いてあったので読みました。『君の膵臓をたべたい』の作者さんですね。
感想を書くにあたって話の落ちを書いてしまうので知りたくない方は読まないでください。
あらすじ
小学生の主人公、小柳奈ノ花が人と接しながら成長する話。高校生の南さん、大人のアバズレさん、木の家に住むおばあちゃんと話をしながら、「幸せ」についての考えを掘り下げる話。
ライトノベルのような
語りの視点が小学生である奈ノ花だったから、なんとなく読みづらい印象をうけました。口語的な文体で音で聞く分にはいいのですが、活字を追うとなると難しい。調べてみたらもともとライトノベル用に書いたということだったのでそれで文体が口語のような印象を受けたのかと。
分岐点
話のつくりは面白かったです。多少謎や疑問が残ることもありますが良いと思います。
南さんもアバズレさんも奈ノ花が成長した姿であり、ある人生の分岐点で間違ったほうを選んだ場合の将来の自分の姿です(たぶん)。そのことを踏まえるとおばあちゃんの言葉は意味深い
大切な人を失った南さん、自分を壊してしまったあばずれさんのことを、もしかしたら自分もそうなっていたかもしれないという話をするとき
「でも、わたしはそうしなかった。幸せだと思える人生をあるいてこられた。そりゃあ、嫌なことなんて数えたらきりがないんだけど、でも、それよりもっと多く、数えきれない楽しいことやうれしいことがある人生を歩いた」
タイムスリップではないですが、あの時違ったことをしていたら、違った未来がある。おそらくおばあちゃんもまた、どこかの時点で奈ノ花との分岐でしょう。ただどこの分岐かわかりませんが。
そんなもしもの話。最終的に相手の言葉が心に残るのは『コーヒーが冷めないうちに』と似ている気がします。
結び
将来の自分と会うことで、自分に変化がある小説はありますが、将来の自分と知らず接して、自分が良いほうに変わっていくというのがおもしろいと思います。おばあちゃんと一緒に猫も消えてしまいましたが、あれは人間に生まれなかった場合なのかということと、それぞれが会う場所はなにか意味があったのかと考えています。
個人も問題から世界の問題に
久しぶりの新書。今回は少し硬いやつです。
大まかな話はつかめたけど、細かい話はわからないので、気になる方はぜひ読んでみてください。
要約
世にはタックスヘイブンがあり、タックスヘイブンが存在することで所得税の累進課税が正常に機能していない場合が存在する。また、タックスヘイブンはマネーゲームの舞台やテロ組織への資金供給源となっている。
読んでみて
話の流れが
2タックスヘイブンの説明
3タックスヘイブンを利用した人や企業事例
4タックスヘイブンとテロの関わり
7解決案
となっており、途中からヘッジファンドへの話が強くなった気がします。最初は、導入を所得税の不平等にすることで読者の気持ちをつかみ、ヘッジファンドが起こす金融危機を伝えたかったのかと思いました。
金融危機についてあまり知識がなかったために、ヘッジファンドの大量資金により一国の金融をだめにする話が印象に強かったからでしょうか。ヘッジファンドが話の主役になった気もします。また、ヘッジファンドからタックスヘイブンという話の展開にしてもおもしろいかと思いました。
それでもやはり、タックスヘイブンを題名に持ってきたのは著者の世界的な問題に対する認識があったからなんでしょう。
もし仮に、つかみの所得税の不公平について議論を終始するなら、累進課税の段階を急激に上げればいいのではないかと安易に思えてしまいます。最初に出てくる所得と所得税率のグラフを見る限り、軽減はしているものの税金はかかっているので、負荷を高くすればよいと感じます。
ですが、テロと金融危機について個人の体験があり、それらの共通の原因であるタックスヘイブンであることから、話を進めることで著者を世界の問題に導いたのかもしれません。
ゆえにその問題に対する対策は難しく思えます。本書の終わりのほうで対策の話がでましたが、本当に難しい話なのかと思います。タックスヘイブンを国の特徴として国力の基盤にしている国もあるかと思います。そのような国がそうそうにタックスヘイブンにつながる制度である税金の低さを手放すのかと。
世界に対する認識が変わる読書体験でした。
手紙
定期的に私に小説を貸してくれる人から借りました。今まで誰からか借りることが少なかったので、本を通して人とつながることができるのは、楽しいですね。貸してくれる本も暖かい本が多く、貸してくれる人の人となりを感じています。
〈あらすじ〉
鎌倉で代筆屋を営む主人公が代筆屋としての仕事を通して、他者と関わりあい、かつて仲違いをした人とのことを思い返えしていく話。
〈代筆屋としての仕事〉
てっきり代筆屋って、もととなる文章を渡されて、ただ文字を書くだけかと考えていたけど、そうではないんですね。内容も考えて書いていて、難しい仕事だと思います。一通の手紙で、そこに書かれた言葉によって、誰かと誰かが仲良くなったり、不仲になったりして、心に敏感でないと出来ないと思いましたね。
〈日常的な暖かさ〉
物語のなかで人物はいい人ばかり。激しい喜怒哀楽の感情描写はありません。いい争いも先代と主人公の過去の場面のみで、単調な話のように感じもしました。一方で、話全体で四季を楽しむ姿、人との他愛のないやりとりが日常的で、心が落ち着く物語でした。その分、文を書く場面は真剣そのもので、普段私たちがしている行動ですが、代筆屋としての重みや誇りを感じらました。
所作の美しさというもの感じます。
世辞ではない
最近『嫌われる勇気』と今回紹介する『人を動かす』を同時進行で読んでいて思ったことを書きます。この二冊を食べ合わせが悪いです。
要約
人を扱いについて書かれた本です。もしかしたら、以前の上司は、これのどれかを用いて私に接していたので、気持ちよく仕事ができたと思っています。
本の成り立ち
この本は人間関係について講演会をしていたカーネギーが良いテキストがなく、講演会のたびにカードをつくり、それをまとめたものです。最初はパンフレットくらいだったのが、講習会の回を重ねるたびに15年後にはこの本になったそうで。
一つの原則に対して、自分や他社の体験談を例にとり話を展開していくので、説得力のある事例が大切であり、それを集めるの時間がかかるのでしょうね。
どうしていくか
本書にいくつもの原則が出てきますが、私は一番『重要感を持たせる』というのが大切なのかと思います。字面で『重要感を持たせる』って書くと伝わりづらいですが、その人が特別で私や世界にとって重要だと思わせることなのかと思います。
私の経験ですが、この本を読んでから、飲み会に行くと話の幅が広がりました。少し、人と話すのが楽になります。自分がすこしでもその人のことをよい印象をもっていると賞賛する言葉ってすらすらでるものだと思いました。自分の性格とあっている社交術を手に入れた気がします。
ただ、いつも仕事様子を見てる人にはすごいと思っていることを伝えることができますが、知らない人は難しいですね。あと、あくまで好かれたい人に使う人との接し方なので、好かれなくてもいい人には使わなくてもいいのかと思いました。確かに、この人に好かれるのは、あと一年くらいは得かもしれないけど、そこまでしなくてもいいと思う時があります。世辞はいいたくない。
お世辞と感嘆の言葉とは、どう違うか?答えは簡単である。後者は真実であり、前者は真実でない。後者は心からでるが前者は口からでる。後者は没我的で、前者は利己的である。後者は誰からも喜ばれ、前者はだれからも嫌われる。 ---p44
では長所をどう知る
人間はなにか問題があって心がそれに奪われている以外は、たいてい、自分のことばかり考えて暮らしている。そこで、しばらく自分のことを考えるのをやめ、他人の長所を考えてみることにしたらどうだろう。他人の長所がわかれば、見えすいた安っぽいお世辞など使わなくて済むようになるはず。 --p46
おそらく、この域までいけるかが勝負だと思います。