言葉の力『川口俊和/コーヒーが冷めないうちに』
前回『人魚の眠る家』を貸してくれた方が貸してくれたので読んでみました。
「あっさり読めるよ」と言われてあっさり読みました。
要約
コーヒーを入れてから冷めるまでの間、過去にいける喫茶店。制約もあるが、そこで時間を移動する4人の話。「恋愛」、「夫婦」、「姉妹」、「家族」の4つのテーマで書かれています。
読んでいて思ったこと 読み終わって思ったこと
この小説のタイムトラベルには、「過去でどのようなことをしても現在の状況は変わらない」というのルールがあります。少し変わっている設定ですね。
最初の1話を読んでいて、よくあるタイムトラベルものかと思っていました。しかし、違いましたね。2話読んであとの2話も大体予想がついていたのですが、感動してしまいました。大体予想がついていたのに。特に最後の「家族」については、心にしみました。
上記のルールがあるのですが、作中の人物たちは「現状は変わらないが本人たちが変わる」という展開になっていて、その変わる姿に儚さの中の希望を見たような気がして良いと思いました。
川口さんは、登場人物の心の変化を書きたかったかったのかと思います。自分が現実が変わらなくても、誰かからの言葉一つで、自分の心が変わる様子を作中できれいに表現していました。言葉を大切にする小説家らしく、よい本だと思います。
私も現実は変わらなくていいから、昔に戻って感謝の気持ちを伝えたい人がいるので、もし戻れるなら戻りたいですね。
読み終わって、世界観について書かれていない部分があり、続編があるのかと思います。でも、このままその世界観を想像するのも楽しいので、これだけで終わりも良いかと思います。